会員になっているフィットネスクラブではプレコリオと言われるレッスンがある時にはいつも入場に長蛇の列が出来ています。
私は参加したことが無いのですがそんなに楽しいのですか?常連さんが前列に陣取っていてちょっと怖いです。
プレコリオレッスンを導入しているクラブでは猛烈なファンを獲得していることが多いです。集客にも優れておりたくさんの人に支持されています。
それだけ楽しくてやりがいのあるレッスンだと言えるでしょう。
理由は完成度の高い音楽とコリオ(振付)にあります。
ただしそれだけなら他にも優れているレッスンプログラムはいくらでもあります。経験豊富で抜群のスキルを持つインストラクターのオリジナルレッスンがどこのクラブにもあるはずです。
しかし信じがたい事に経験一年程度のインストラクターが行うプレコリオレッスンの方が集客で勝ることがあるのです。
では一体何がそんなに楽しいのか?魅力はどこにあるのか?
20年以上のインストラクター歴を持ち、自らも4種類のプレコリオレッスンを担当しているボクが詳しく説明します。
プレコリオとはどんなもの?

プレコリオとは?
- プレ ・・・事前に、先行して
- コリオ・・・動き、振付
つまり事前に完成された振付で行うレッスンプログラムの事。
認定ライセンス・振付・音楽をセットで作成会社から購入する。契約はインストラクター個人でも法人でも行うことができる。大手のフィットネスクラブがオリジナルで開発することもある。
担当インストラクターは決められたコリオに沿ってレッスンを進めていく。誰が行っても同じレッスン内容・クオリティ水準を保てるようになっている。
プレコリオ以外のレッスンでは各インストラクターがコリオを作成し、それにあった音楽を選びます。インストラクターによってレッスン内容は大きく違うものになります。
プレコリオのジャンル
- バーベルエクササイズ《筋力トレーニング》
- ボクシングフィットネス《燃焼系エクササイズ》
- エアロビクス・ステップ系《燃焼系エクササイズ》
- ダンス系《ファン系・燃焼系エクササイズ》
- バイク系《燃焼系エクササイズ》
- ヨガ・ピラティス・バレエ系《コンディショニング系エクササイズ》
- ファンクショナル系《ファンクショナルトレーニング》
開発会社により得意とするジャンルは変わりますが大体このようなものが主流となっています。
比較的激しく追い込むクラスが多いです。
音楽・コリオ、そして育成
プレコリオレッスンでは開発会社より音楽・コリオ・育成がワンセットで提供されます。
最新の曲から長年親しまれているものまでコリオに合わせた音楽(または音楽に合わせたコリオ)を使用する。
各社専門のアレンジャーが編曲、長さ、スピードを調整している。コリオに合わせた効果音が入ることもある。
音楽の著作権も販売会社が対応しているので問題なし。
ジャンルに合わせ安全で効果的なコリオ(動き)を行う。一曲あたり3~10ブロック(3~10種類のコリオという意味)で構成されることが多い。
経験と実績のあるコリオグラファーにより開発されている。
2日~3日間の集中研修を経て試験に合格すれば認定インストラクターとして登録される。その後も年に数回あるフォローアップ研修に出席義務があるものもあり。
2~3ヵ月に一度コリオと音源が提供される。実演するための研修を用意している提供会社もある。
2020年以降は新型コロナウィルスの影響でオンライン研修とビデオ認定試験が主流になりつつある。
インストラクターの育成に関しては参加者には見えないところなので気にならないかもしれませんがかなり充実しています。
特に最初に受ける数日間の認定研修会ではこれまでに経験したことが無いくらいにボロボロになるまで訓練します。
その後も年に数回のフォローアップ研修やワークショップを経てインストラクターは皆さんの前に立っています。
世界のプレコリオ

現在主流になっているプレコリオは海外の企業が開発したものとなっています。数ヵ国で展開しておりブランド化されています。
主催企業 | 代表プログラム | 国 |
レズミルズ | ボディパンプ、 全16種類 | ニュージーランド |
ラディカルフィットネス | ファイドウ、 全11種類 | アルゼンチン |
MOSSA | グループパワー、 全11種類 | アメリカ |
カリテス | リトモス等、 全3種類 | アルゼンチン |
DDD | バイラバイラ等、 全6種類 | スペイン |
アディダス トレーニングアカデミー | ジム&ラン等、 全5種類 | 日本 |
他にもZUMBAやバレトンなど半プレコリオもあります。

プレコリオが支持される3つの理由

参加者にとってプレコリオには次の3つの魅力があります。
- シンプルなのに効果抜群のエクササイズ
- きつい運動なのに楽しい
- 費やした時間以上にコストパフォーマンスが高い
サービス業では『顧客満足の上をいく感動の提供』というものを目指している企業が多いです。プレコリオレッスンはそれらを加味して開発されています。
プレコリオのメリットとデメリット

プレコリオには大きな強みがありますが弱点もあります。それぞれを見てみましょう。
プレコリオのメリット
端的に言えばレッスン開発にかける金の額が違います。
特に海外の大手制作会社はそれだけで商売をしているので全ての完成度がものすごく高いです。
ワンレッスンのエクササイズを一つの作品のように仕上げてきます。
プレコリオレッスンの人気の秘密はここにあると言っても良いでしょう。
ボクは長年オリジナルプログラムを経験した後にプレコリオを担当しているので違いは良く分かります。
驚いたのが音楽とコリオ(動き)の完全融合です。
プレコリオの場合は音楽の盛り上りがコリオの盛り上りでありその逆もまた然りなのです。
オリジナルレッスンの場合はそうはいきません。
なんとなく合いそうな音源を専門業者から購入しています。
中には音楽に合わせてコリオを考案したり音源を改良したりする熱心なインストラクターもいるかもしれませんが見たことはありません。普通はコリオを作成して、それとは別になんとなく良さげな音楽を使います。
それぞれに良さがあるのでどちらが優れているかという事はありませんが完成度という点ではプレコリオレッスンが圧倒的に勝っています。

プレコリオのデメリット
プレコリオでは目的を運動効果と楽しさに徹しています。そして対象者は世界中のフィットネス愛好者です。日本ほど高齢化は進んでおらず世界の年齢層は若く体力のある人です。
また、少し乱暴な言い方をすれば雑なのです。多くの人々に結果を提供するために目の前の参加者に合わせた細かな調整が利きません。インストラクターには事前に用意されているストーリーを正確に伝える能力が求められます。
具体的には、
- ハード過ぎて低体力者にとってはついてこれないことがある
- 高齢者向きではないモノが多い
- 熱狂的な常連者が多いため慣れていない人は威圧を感じることもある
ボクの担当レッスンでは80歳を超えた人も参加してくれることもありますが、その人はフルマラソンを完走するような鉄人であったりします。内容は低体力者や高齢者向きとは言えません。
またたくさんの人が集まるので常連者の場所取りや派閥争いなどトラブルが多い傾向にあります。初心者は引いてしまう事もあります。
【プレコリオに指導力は必要なの?】
プレコリオに批判的なインストラクターによくある意見として『誰がやっても同じ内容なので個性が発揮できない』、『丸暗記するだけなので指導力を必要としない』というものがあります。
しかしまったく当てはまらないと言い切れます。
そもそもレッスン自体が非常に高度なものなので、指導力も表現力も高度なものが求められます。丸暗記しているだけの軽い気持ちで取組んでいるインストラクターであれば目の肥えた熱狂的な参加者から追い出されてしまいます(笑)。ボクも担当し始めの時に洗礼を浴びたことがあります。それだけ真剣勝負の場所なんです。
またみんなが同じ内容なので指導力の差がまる見えになります。おそろしや~。
ボクの場合であればオリジナルレッスンに比べて3倍くらいの時間を使って準備をしています。

何故クラブ側はプレコリオレッスンを入れたがるのか?

スタジオのレッスンスケジュールは年々プレコリオの比率が高まっています。
会員からの要望の強さ以外にも以下のような理由もあります。
- クラブ側はインストラクター個人のスキルを管理しきれない
- 質の高いレッスンインストラクターを確保することは容易ではない
- クラブ経営は競争が熾烈で高レベルのインストラクターへ出せるお金は限られている
- プレコリオであれば社内スタッフが担当することが多いためスケジュールを立てやすい
- 社内スタッフを高レベルのインストラクターに育成してくれる
- 安定した集客が見込めるため会員継続率が高まる
- 結果的に売上の増につながる
民間企業は営利目的でクラブ運営をしています。
売上を増やすためには地域に認められ通ってもらえる人を増やすことが必要です。結局それは社会貢献につながります。
運営クラブは集客アップ、つまり売上アップに繋がるかどうかを判断基準としてレッスンスケジュールを決めています。
よって、プレコリオレッスンは優先的に導入される傾向にあるのです。

日本でプレコリオが普及し始めたのは1998年以降です。コナミスポーツがレズミルズ(当時のBTS)を導入したのが始まりでした。
2005年くらいまでは『音楽とコリオを決めるだけなら自分たちでも出来るんじゃね?』という事でフィットネスクラブ運営会社が社内でプレコリオを開発することが多かったのですが、2021年現在ではほとんど無くなってしまいました。
開発するための人材と資金が違い過ぎました。資源を集中した海外企業が開発した商品とは質で大きく差があったからです。